今年の春は記録的な暖かさで、案の定この花もずいぶん早く咲き始めました。5月9日に撮影。
まだ5月も初旬だというのにこの花もたくさん咲いてます。ほんの数キロ歩いただけですが、ゆうに2000株以上が花をつけてました。
英語での名前: Venus’ slipperまたはFairy
slipperなど。
花の形から名付けられたんでしょうね。ラン科らしいある意味グロテスクな、でもとても可憐な花です。
日本で見られる近縁亜種はホテイランと呼ばれます。丸く目立つ唇弁を布袋様の腹に例えたと言われます。私にはそんなふうに思えませんけど…。
学名:Calypso bulbosa var. americana
calypsoはギリシャ神話に出てくる蒼穹を支える巨人アトラースの娘で海の女神。“隠匿”という意味があります。Bulbosaはその球根によく似た球茎から名付けられています。世界には4つの亜種があることが知られています。
・バンフの近郊で見られるのはvar. americanaで明るい色(白、黄)の唇弁に黄色の毛がたくさんあるのが特徴です。
・日本で見られるホテイランは、var. speciosa(Schltr.) makino で距が唇弁よりも長くはみ出して見えている。また、葉脈の凹凸が激しい。
・var.
bulbosa は北欧、バルト海沿岸、ロシア、モンゴル、韓国に分布。北海道南部のごく一部と青森のヒバ林に見られる。距が唇弁よりも短いものが多く、ヒメホテイランと呼ばれる。
・var.
occidentalis アラスカからシエラネバダまでの太平洋岸に分布。唇弁には紫がかった斑点があり、斑ら。毛は白く、まばら。“西方の”という意味のoccidentalisは学名によく利用されています。
他にnothovar. kostiukiae catling というamericanaとoccidentalisの交配種がアルバータに見られるようです。
外花被片は3枚の萼片(背萼片と2枚の側萼片)で構成され、内花被片は2枚の側花弁と唇弁からできています。
この花は唇弁がピンク色がかっています。
唇弁の裏側にはいかにも蜜が入っていそうな距がありますが、ランの花には蜜がありません。その香りと花の形で虫(主にマルハナバチ)を誘引して受粉します。
ランの花の雄蕊と雌蕊は合着して蕊柱を形成します。先端には粘着性の黄色い花粉塊がついています。
単子葉類のランの葉はシンプルな平行脈です。日本のホテイランやヒメホテイランはもっと凸凹しています。
花茎と葉柄の元には球形をした地下茎があり、球茎と呼ばれます。花茎の下の苔をそっと剥がすと球茎が見られます。この種の花はとてもデリケートですぐに枯れてしまいますので気を付けて…。
このでんぷん質の球茎は生でも美味しいそうです。残念ながら食べたことはありませんが…。
先住民の中には食用以外にてんかんの症状を和らげる薬としても利用していた地域もあるようです。
園芸的価値の高さから採取されてしまいますが、生育には共生菌が必須であると考えられます。おそらくここロッキーでの共生菌はロッジポールパイン(Pinus contorta)の外生菌根菌だと思われます。
株が集まってパッチ状に咲くことも良くあります。
今回撮影に訪れた場所には珍しい白変種の花がいくつか見られます。赤紫の色の部分がすべて抜け落ちています。葉も少し緑色が淡い色をしています。
白変種の隣には通常の花が咲いています。
おまけ: 他にも花はあったんだけれど、ビーナス・スリッパーでいっぱいいっぱいになってしまいました。かろうじてこの白いスミレ(Kidney-leaved violet
、 Viola renifolia)だけ撮りました。
第2段の掲載、楽しみにしてました!
返信削除綺麗な花ですねー。
今回も奥をボカしたり、手前をボカしたり、素敵な写真が沢山で、我々もこんな風に撮れたらなぁ、と思って拝見しました!
日本の花の情報も書いていただいてとても興味深いです。
ホテイランは、八ヶ岳の方で見られるみたいです!
日本での山歩きは、どうしても登頂が目的になりがちですが、今回のブログを見ていて、今度は花探しの山歩きしてみたいと感じました!
花探しの山歩き、楽しいですよ。おすすめです。
削除ウェブの画像を見ていると日本のホテイランの方がグロテスクだと思ってしまいますけど…。
今年はがんばって花の写真を撮ります。
Facebookにも、コメントしちゃいましたけど、和田ちゃんペースで、じっくり、図鑑のページが増えていく。。感じがする。です。
返信削除ヒロ・千里さんチームとも、花、接写、ロッキー歩き、お天気の中で、のんびり笑顔で、(きっと、爆笑話が一日中か!?) 出来る日が、そのうちめぐって来るといいな~。
まぁ図鑑の方は少しづつね。
削除次は冬だけど、最近はヒロさんと千里さんの為に花の写真載せてるから、(笑)すぐだよ、きっと。